練馬ラボラトリー

理系院卒による数理ブログ

偏微分方程式:Charpitの方法と正準方程式〜特性曲線の方法〜

問題

1階の偏微分方程式F(x,y,u,u_{x},u_{y}) = 0を解くという問題を考えます。

重要なのは解法のテクニカルな側面より、その哲学の方です。

偏微分方程式常微分方程式に比べて難しいので、問題をより簡単な常微分方程式に置き換えて解くのです。

まず、問題の偏微分方程式微分方程式とリレーションとに分解します:

\begin{eqnarray}dz-p_{1}dx-p_{2}dy&=&0\\F(x,y,z,p_{1},p_{2})&=&0\end{eqnarray}

ここでx,y,z,p_{1},p_{2}は独立変数でFR^{5}の上の関数。Fは微分を含まないただの関係式になりました。この分解は問題の鍵を握る重要なポイントです。

ハミルトン形式にすること

問題が解けたならばz=u(x,y)p_{1}=\partial u/\partial xp_{2}=\partial u/\partial yとなるので、これを先読みして改めて

\begin{eqnarray}\frac{\partial}{\partial x}&:=&\frac{\partial}{\partial x}+p_{1}\frac{\partial}{\partial z}\\\frac{\partial}{\partial y}&:=&\frac{\partial}{\partial y}+p_{2}\frac{\partial}{\partial z}\end{eqnarray}

と定義します。あえて同じ記号を使いました。

唐突ですが、(x,y,p_{1},p_{2})を相空間の正準座標とみなします。

まず、上で再定義した微分を使って、ポアソン括弧をいつものように

\begin{eqnarray}\{F,G\}:=\frac{\partial F}{\partial p_{1}}\frac{\partial G}{\partial x}+\frac{\partial F}{\partial p_{2}}\frac{\partial G}{\partial y}-\frac{\partial F}{\partial x}\frac{\partial G}{\partial p_{1}}-\frac{\partial F}{\partial y}\frac{\partial G}{\partial p_{2}}\end{eqnarray}

ここでG=G(x,y,z,p_{2},p_{2})なる関数です。微分は上で定義されたものが使われていることに注意。例えば

\begin{eqnarray}\frac{\partial G}{\partial x}:=\frac{\partial G}{\partial x}+p_{1}\frac{\partial G}{\partial z}.\end{eqnarray}

Fをハミルトニアンとみなし、正準方程式を解きます。そこから\{F,G\}=0を満たす、いわゆる第一積分

\begin{eqnarray}G(x,y,z,p_{1},p_{2},C_{1})\end{eqnarray}

を求めます。ここでC_{1}積分定数です。

第一積分が得られたら連立方程式

\begin{eqnarray}F(x,y,z,p_{1},p_{2})&=&0,\\G(x,y,z,p_{1},p_{2},C_{1})&=&0.\end{eqnarray}

を解いてp_{1}=p_{1}(x,y,z,C_{1})p_{2}=p_{2}(x,y,z,C_{1})を求めます。

パッフ形式\omega

\begin{eqnarray}\omega:=dz-p_{1}dx-p_{2}dy\end{eqnarray}

とします。これが完全可積分でなければ、積分は失敗ということになります。

積分して完全解

\begin{eqnarray}z=u(x,y,C_{1},C_{2})\end{eqnarray}

を得ます。

まとめ

  1. 数学的に問題になるのは可積分条件の箇所です。詳細は省きますが、下に私が勉強に使った論文のリンクを貼りますので、興味がある方はご覧くださいね。
  2. 個人的な趣味の問題で、ハミルトン形式として書いてみました。

参考文献

THE LAGRANGE–CHARPIT METHOD par MANUEL DELGADO (1997) https://core.ac.uk/download/pdf/51404814.pdf